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「東京大学古本募金の勧め」

東京大学文書館館長 前東京大学理事・副学長 佐藤愼一
 大学教員にとって書物は最も大切な研究工具であり、研究室に数千冊に及ぶ書物を蓄えている教員も少なくない。書物の山に囲まれているとき、彼らの心は最も安らぐ。そして、書物を愛するがゆえに、定年退職の日を間近にした彼らが最も悩むのは、愛する書物をどうするのかという問題である。
 再就職先の大学の研究室に書物をそっくり移せる人や、自宅に広大な書庫を持つ人は、悩む必要はない。だが、現実にはそのような幸運な人は少数派であって、大部分の大学教員は書籍の選別と処分を迫られることになる。彼らは先ず、今後の研究に不可欠な書物や特に貴重な書物を選び出し、自宅に送るはずである。次に専門書を、使ってくれる研究仲間や学生たちに無償で贈呈するだろう。それでも膨大な量の書物が残るはずである。これをどうするか。東大図書館は無償でも引き取ってくれない。捨てるのは書物がかわいそうだ。古本屋を呼んで値段の交渉をするのは煩わしい。そう考える人々にとって最善の方法は、東京大学古本募金を利用することである。
 東京大学古本募金の最大のメリットは、手間がかからないことである。書物をダンボール箱に入れ、古本募金に電話すれば、指定の日時に宅急便業者が引き取りに来てくれる。運搬費用は不要である。何回かに分けて出せば、精神的にも肉体的にも負担は少ない。
 買い取り価格は、すぐに郵便で知らせてくれる。自分で新刊を購入したときの金額に比べればはるかに安いが、これで書物が無駄にならず、かつ東京大学の財政に多少なりとも貢献できると思えば、心もなごむ。
 古本募金は、自宅にも引き取りに来てくれる。だから、まずは自宅に多めに書物を送り、書斎に入りきらない分を引き取ってもらうのが、賢明な方法である。古本募金をうまく活用すれば、定年退職にまつわるストレスを大幅に軽減することが可能である。

(2014年4月 寄稿)
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