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「古本募金によせて」

東京大学名誉教授 前附属図書館長 古田元夫
 私は、今年の3月に東京大学を退職したが、研究室と自宅にたまった本の扱いは、頭の痛い問題だった。10年ほど前に家を新築した時に、図書収納スペースを余裕をもって確保したつもりだったが、見積りを誤り、自宅のスペースは数年前に満杯となり、研究室においてあった私物の本を収納する場所がなくなっていた。こうした悩みをもつ者にとって、東大基金のやっている「古本募金」は光明である。最近は、研究者にとって「魅力」ある本は、古本屋から見るとほとんど「魅力のない」本で、ただでももっていってくれないことが多い。その点、「古本募金」は、メールを送りさえすれば、指定の宅配業者が本の回収に来て、無料で運んでくれる。大量の本を出す場合、本の所有者がやるのは、本の箱詰めだけでよい。その上、出した本に「古本」としての値がつけば、それは「東大基金」への寄付となる。多少なりとも東京大学への「貢献」になるのも、「古本募金」の魅力だろう。
 私は、退職するまでの六年間、附属図書館長をしていたので、本来であれば、大学の図書館が、研究者の蔵書の引き取りに、もう少し有効な役割りを果たせないものかと思ってきた。従来、東大の図書館が基本的には研究者の蔵書に「冷た」かったのは、①スペースと、②図書の受け入れにかかる費用、人員という壁があったからである。このうち、スペースは、現在、本郷で進んでいる新図書館構想が実現すれば、多少、状況が変化する。新図書館の完成までに、図書館と「東大基金」で話し合って、今の「古本募金」の仕組みに、研究者の蔵書のうち、東大のどの図書館にもない本は図書館が引き取れるような仕組みを組み込むことができれば、学内の「古本募金」利用は、格段に増大するのではなかろうか。
 この「夢物語」はともかくとして、「古本募金」は、現行の仕組みでも、蔵書の処理に悩む研究者には、十分魅力的なものであることを強調しておきたい。

(2015年 寄稿)
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